文化10年(1813)西国三十三所の納経帳(後半)

 

表紙

この納経帳は、文化10年(1813)に阿波国板野郡大寺村の三橋茂兵衛と母のフサが西国三十三所と信州善光寺を巡拝したときのものである。以下に、この納経帳の後半の詳細を見ていく。

播磨国の書写山から巡拝をはじめた茂兵衛とフサは、丹後・北近江から美濃の33番華厳寺を回った後に信州善光寺へ参拝。そこから1番札所の那智に向かい、ほぼ順番通りに大和の7番岡寺まで巡拝した。

後半は8番長谷寺から順番通りに大和・山城南部・近江南部の札所を巡り、京の都に入る。多少順番を前後しながら洛東・洛中の札所を参拝し、そのまま20番善峯寺から24番中山寺まで順番通りに巡拝して結願となっている。

長谷寺から今熊野観音寺まで

長谷寺・興福寺南円堂

長谷寺・南円堂の納経

【右】西国8番 長谷寺
豊山 神楽院 長谷寺
所在地:大和国式上郡初瀬村(奈良県桜井市初瀬)
揮毫は「勅願所」「本尊十一面観世音」。中央の宝印は蓮華座上の火焔宝珠に十一面観音の種字「キリーク」。

【左】西国9番 興福寺南円堂
興福寺 南円堂
所在地:大和国添上郡奈良町(奈良県奈良市登大路町)
揮毫は「和州奈良 南円堂」。中央の宝印は登り藤に不空羂索観音の種字「モウ」。

三室戸寺・醍醐寺女人堂

三室戸寺・醍醐寺女人堂の納経

【右】西国10番 三室戸寺
明星山 三室戸寺
所在地:山城国宇治郡三室村(京都府宇治市莵道滋賀谷)
揮毫は「勅願所」「千手観世音菩薩」。中央の宝印は火焔宝珠に千手観音の種字「キリーク」。

【左】西国11番 上醍醐寺 炭山女人堂
深雪山 上醍醐寺 炭山女人堂
書き置きを帳面に貼り付けている。揮毫は「本尊如意侖観世音」、右の行一番下の「上酉酉」は「上醍醐」の略字。中央の宝印は円に如意輪観音の種字「キリーク」。

※西国札所の准胝堂がある上醍醐寺は女人禁制であったため、女性は上り口にある女人堂で参拝した。この納経帳も同様だが、下醍醐の女人堂ではなく、南の上り口である炭山村(現在の宇治市炭山)にあった女人堂に参拝しているようだ。
ただ、炭山には女人堂と光堂があり、女人堂には准胝観音を、光堂には如意輪観音を祀っていたというのだが、この納経帳では本尊を如意輪観世音としている。

正法寺・石山寺

正法寺・石山寺の納経

【右】西国12番 正法寺
岩間山 正法寺
通称:岩間寺
所在地:近江国滋賀郡内畑村(滋賀県大津市石山内畑町)
揮毫は「勅願所」「本尊千手観世音」。宝印は上の方に押され、勅願所であることを示す十六八重菊の御紋。

【左】西国13番 石山寺
石光山 石山寺
所在地:近江国滋賀郡寺辺村(滋賀県大津市石山寺)
揮毫は「江州石山寺伽藍」。中央の宝印はかすれてよくわからないが、蓮華座上の火焔宝珠に如意輪観音の種字「キリーク」ではないかと思われる。

三井寺・今熊野観音寺

三井寺・今熊野観音寺の納経

【右】西国14番 三井寺観音堂
長等山 園城寺 観音堂
通称:三井寺
所在地:近江国滋賀郡神出村(滋賀県大津市園城寺町)
揮毫は「江州三井寺円通殿」。中央の宝印は蓮華座上の円に如意輪観音の種字「キリーク」。

【左】西国15番 今熊野観音寺
新那智山 観音寺
通称:今熊野観音寺
所在地:山城国愛宕郡新熊野村(京都市東山区泉涌寺山内町)
揮毫は「本尊十一面観世音大士」。中央の宝印は蓮華座上の火焔宝珠に十一面観音の種字「キリーク」。

六波羅蜜寺から中山寺まで

六波羅蜜寺・清水寺

六波羅蜜寺・清水寺の納経

【右】西国17番 六波羅蜜寺
補陀洛山 六波羅蜜寺
所在地:洛東轆轤町(京都市東山区轆轤町)
揮毫は「本尊十一面大士」。中央の宝印は蓮華座上の宝珠に十一面観音の種字「キャ」。

【左】西国16番 清水寺
音羽山 清水寺
所在地:洛東清水門前(京都市東山区清水)
揮毫は「本尊十一面千手観世音」。中央の宝印は蓮華座上の火焔宝珠に千手観音の種字「キリーク」。

頂法寺・革堂

頂法寺・行願寺の納経

【右】西国18番 頂法寺
紫雲山 頂法寺
通称:六角堂
所在地:洛中下京堂之前町(京都市中京区堂之前町)
揮毫は「勅願所」「六角堂救世観世音」。中央の宝印は六角形の中に勅願所であることを示す十六八重菊の御紋。

【左】西国19番 革堂
霊麀山 行願寺
通称:革堂
所在地:洛中上京行願寺門前町(京都市中京区行願寺門前町)
揮毫は「勅願所」「本尊千手観世音」。中央の宝印は蓮華座上の火焔宝珠だが、中は判読できない。

善峯寺・穴太寺

善峯寺・穴太寺の納経

【右】西国20番 善峯寺
西山 善峯寺
所在地:山城国乙訓郡小塩村(京都市西京区大原野小塩町)
揮毫は「良峯大悲殿」。中央の宝印は蓮華座上の宝珠に千手観音の種字「キリーク」。

【左】西国21番 穴太寺
菩提山 穴太寺
所在地:丹波国桑田郡穴太村(京都府亀岡市曽我部町穴太東辻)
揮毫は「大聖観世音」。中央の宝印は判読できない。

総持寺・勝尾寺

総持寺・勝尾寺の納経

【右】西国22番 総持寺
補陀洛山 総持寺
所在地:摂津国島下郡総持寺村(大阪府茨木市総持寺)
揮毫は「津国惣持寺」。中央の宝印は判読できない。

【左】西国23番 勝尾寺
応頂山 勝尾寺
所在地:摂津国島下郡粟生村(大阪府箕面市粟生間谷)
揮毫は「勅願所」「千手大悲殿」。中央の宝印は蓮華座上の火焔宝珠に千手観音の種字「キリーク」。

中山寺

中山寺の納経

【右】西国24番 中山寺
紫雲山 中山寺
所在地:摂津国川辺郡中山寺村(兵庫県宝塚市中山寺)
揮毫は「中山寺」。中央の宝印は蓮華座上の雲に乗った火焔宝珠に十一面観音の種字「キャ」。

文化10年(1813年)西国三十三所の納経帳
文化10年(1813)に阿波国板野郡大寺村に住む三橋茂兵衛という人物が母親を同行して西国三十三所と善光寺を巡拝した納経帳。タイトルは聖観世音菩薩の種字「サ」に「奉納経帳」。大寺村は現在の板野町大寺で、四国3番札所金泉寺の周辺である。 2月7...

文化10年(1813)西国三十三所納経帳詳細(前半)

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