
西八朔の杉山神社は武蔵国の六之宮とされる都筑郡唯一の式内社・杉山神社の論社である。鶴見川流域を中心する地域には多数の杉山神社があり、いずれを式内社とするかについては諸説あるが、武蔵国総社六所宮の大國魂神社では西八朔の当社に比定し、西殿六之宮に祀られている杉山大神の御本社とする。
正式名称 | 杉山神社〔すぎやまじんじゃ〕 |
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御祭神 | 五十猛命 〈相殿〉大日孁貴命 素盞嗚命 |
社格等 | 式内論社 武蔵国六宮 旧郷社 |
鎮座地 | 横浜市緑区西八朔町208 [Mapion|googlemap] |

御朱印
※御朱印は本務社の琴平神社(川崎市麻生区)で拝受できる。

(1)平成21年(2009)拝受の御朱印。中央の朱印は「杉山神社」。右の印は「武蔵國総社六ノ宮」。
杉山神社について

御祭神
■五十猛命
配祀
■大日孁貴命
■素盞嗚命
■大田命
御由緒

延喜式神名帳にその名が見える都筑郡・杉山神社は、武蔵国の総社・六所宮である大國魂神社にも西殿の六之宮として祀られている。
『続日本後紀』承和5年(838)2月庚戌条には、武蔵国都筑郡の「枌山神社」が霊験によって官幣に預かったと見え、さらに嘉祥元年(848)5月庚辰条には武蔵国無位枌山名神に従五位下を授け奉るとある。
建治4年(1278)頃に作成されたと考えられている「年貢算用状」によると、六所宮(大國魂神社)神主や秩父宮(秩父神社)神主とともに椙山(杉山)神主が見え、武蔵の国衙が杉山神社の祭祀に対して4石の米を支出していたことが知られる。
しかし、旧都筑郡域には多数の杉山神社があり(江戸時代の『新編武蔵風土記稿』によれば70余社)、いずれが本社であるかについては定説がなく、論社も多い。
特に有力な論社としては西八朔(緑区西八朔町)・茅ヶ崎(都筑区茅ヶ崎町)・大棚(都筑区中川町)・吉田(港北区新吉田町)の四社が挙げられている。中でも西八朔の当社は、江戸時代の国学者で大国魂神社の宮司であった猿渡盛章によってもっとも有力な候補とされ、『神祇志料』などはこの説を採っている。
現在、大國魂神社では当社を六之宮の本社としている。
八朔は『和名抄』にある「針斫〔はさく〕郷」に由来すると考えられ、小田原衆所領役帳には「小机八朔」と記される古くからの村である。江戸時代になって西八朔と北八朔に分かれたが、「八朔村」「両八朔村」として一村に扱うこともあったという。
西八朔の杉山神社の創建については不詳である。『新編武蔵風土記稿』には「昔は西北両村の鎮守なりしが今は当村のみなりという」とある。
猿渡盛章の『新撰総社伝記考証』によれば、当社はもともと現在地にあったわけではなく、北西300mほどのところにある大明神山と呼ばれる場所にあったという。また東方約2kmほどの小山村(緑区小山町)内に「鳥居土」という地名があって、昔当社の一の鳥居があったところと村人が語り継いでいたといい、かつて当社が相当の勢いをもっていたことがわかるとする。
当社に残る棟札や旧別当・顕弘山極楽寺の墓碑年号から推測して、現社地に遷座したのは延宝年間(1673~81)の頃と考えられている。
慶安2年(1649)徳川幕府より朱印地5石6斗を寄せられた。
明治6年(1873)郷社に列格。明治43年(1910)無格社・神明社など4社を合祀した。
現在の社殿は昭和57年(1982)に造営されたもので、同年11月3日に遷座祭が行われた。
写真帳

参道入口に立つ社号標。

正面の丘の中腹に杉山神社が鎮座し、その東側(向かって右側)に旧別当の極楽寺がある。道路の右側に総社六之宮の社号標がある。

社号標。「延喜式内社武蔵総社六之宮杉山神社」とある。

社頭風景、参道の石段。

参道石段の鳥居。木造の両部鳥居。

稲荷社。『新編武蔵風土記稿』には末社として末社として八幡社と宝生権現社が記されているのだが、『明治神社誌料』には見えず、現在は稲荷社のみがあるようだ。

力石。相模国の大山阿夫利神社に参詣した際、相模川の河原から担いで帰り、奉納されたものと伝えられている。

拝殿。昭和57年(1982)改築されたもの。

拝殿の扁額「延喜式内社/武蔵総社六之宮/杉山神社」、揮毫は大國魂神社の宮司のようである。

本殿。
メモ
石段を上った丘の上に権現造の木造社殿が鎮座する。正面に千鳥破風と唐破風を重ねた風格のある建物である。古い資料を見ると、改築以前は茅葺きで入母屋造妻入りの素朴で風情のある社殿だったようだ。
上記の通り、式内社・杉山神社の論社は多いが、総社六所宮(大国魂神社)から六之宮の本社として認定されているのは当社である。そのためか、参道入り口の社号標(「延喜式内社武蔵総社六之宮 杉山神社」とある)をはじめ、あちこちに「武蔵総社六之宮」の文字がある。
杉山神社の概要
名称 | 杉山神社 |
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御祭神 | 五十猛命〔いそたけるのみこと〕 〈相殿〉 大日孁貴命〔おおひるめのむちのみこと〕 素盞嗚命〔すさのおのみこと〕 太田命〔おおたのみこと〕 |
鎮座地 | 横浜市緑区西八朔町208番地 |
創建年代 | 不詳 |
社格等 | 式内社(論社) 武蔵国六宮(論社) 旧郷社 |
延喜式 | 都筑郡 杉山神社 |
例祭 | 10月1日 |
神事・行事 | 1月1日/歳旦祭 11月23日/新嘗祭 12月22日/大祓 |
交通アクセス
□JR横浜線「十日市場駅」より徒歩約15分
参考資料
・杉山神社由緒書
・『新編武蔵風土記稿』
・『神祇志料』粟田寛(明治6年)
・『府県郷社明治神社誌料 上』明治神社誌料編纂所(明治45年)
・『神社大観』光永星郎(昭和15年)
・『杉山神社考』戸倉英太郎(昭和31年)
・『中里郷土史』中里郷土史編纂委員会(昭和44年)
・『港北区史』港北区郷土史編さん刊行委員会(昭和61年)
・『横浜緑区史』緑区史編集委員会(平成5年)
・日本歴史地名大系『神奈川県の地名』
・『平成「祭」データ』
・Wikipedia
更新記録
2010.04.28.公開
2025.06.21.改訂、Wordpressへ移行。
