名称 | 瑠璃山 真福院 井戸寺 |
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御本尊 | 七仏薬師如来 |
所在地 | 徳島県徳島市国府町井戸80-1 [Mapion|googlemap] |
【本尊真言】
おん ころころ せんだり まとうぎ そわか
【御詠歌】
面影をうつしてみれば井戸の水 結べば胸のあかやおちなん
【略縁起】
天武天皇の勅願により開創されたと伝えられる。元は妙照寺と称し、本尊は全国的にも珍しい七仏薬師如来である。弘仁6年(815)弘法大師が滞在し、一刀三礼して刻んだ十一面観音の像を納めた。また、水不足に悩む村人のために錫杖で井戸を掘ったところ、一夜にして清水が湧き出したので、村の名を井戸村と称するようになり、寺も井戸寺と呼ばれるようになった。正式に寺号を井戸寺に改めたのは大正5年(1916)のことである。
井戸寺の納経(御朱印)
(1)平成元年拝受の納経。揮毫は薬師如来の種字「バイ」に「七仏薬師」。中央の宝印は蓮台上の円に薬師如来の種字「バイ」。右上の朱印は「四国第十七番」、左下は「真福院」。
(2)平成18年拝受の納経。揮毫は平成元年のものと同じ。朱印も同じ構成だが、印自体は新しくなっているようだ。
江戸時代の納経
(1)天保11年(1840)の納経。揮毫は「奉経大乗妙典(※納と書くべきところを間違えて経としている)」「本尊七仏医王殿」「阿陽名東郡井戸村(※阿陽は阿州と同じ)」「瑠璃山妙照寺」「行者丈」。中央に宝印はない。右上の朱印は「四国第十七番」。左下の「真福寺」の印は現在のものとほぼ同じ。
(2)天保12年(1841)の納経。版木押しで「奉納大乗妙典」「本尊七仏薬師如来」「阿波瑠理山」「妙照寺」「行者丈」。朱印は天保11年のものと同じ。
明治時代の納経
(1)明治38年(1905)の納経。版木押しで「奉納経」「本尊七仏薬師如来」「阿波瑠理山」「妙照寺」。中央の宝印は蓮台上の円に薬師如来の種字「バイ」。右上の朱印は「四国第十七番」、左下は「真福院」。
井戸寺について
山号 | 瑠璃山(るりざん) |
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寺号 | 井戸寺(いどじ) |
院号 | 真福院(しんぷくいん) |
旧称 | 瑠璃山 妙照寺 |
御本尊 | 七仏薬師如来 |
所在地 | 徳島県徳島市国府町井戸北屋敷80-1 |
創建年代 | 白鳳2年(673) |
開基 | 天武天皇 |
宗派等 | 真言宗善通寺派 |
文化財 | 〈重文〉木造十一面観音立像〈県有形文化財〉日光菩薩・月光菩薩 |
覚え書き
江戸時代、関西から徳島に上陸した場合には井戸寺から打ち始めることも少なくなかったようで、承応2年(1653)に四国を巡拝し、『四国辺路日記』を記したた澄禅も井戸寺から打ち始めている。
井戸寺の起源は、天武天皇の勅願道場として開創された瑠璃山妙照寺にさかのぼる。『四国辺路道指南』などには瑠璃山明照寺とあり、通称として井戸寺(もしくは井土寺)が用いられている。全国的にも珍しい七仏薬師を本尊とする。
弘仁6年(815)弘法大師が留錫し、一刀三礼して十一面観音像を彫った。現在、六角堂に祀られている重要文化財の十一面観音像がその像とされる。
また、この土地の水が濁った水であることを憐れみ、一夜のうちに錫杖で井戸を掘ったという。その井戸の清水に映った自らの姿を石に刻んだということから「おもかげの井戸」と呼ばれる。この井戸に因んで井戸寺(もしくは井土寺)と呼ばれるようになり、地名も井戸村と称するようになったと伝えられる。
中世には禅宗であった時代もあるらしい。かつては七堂伽藍の大寺院であったというが、貞治元年(1362)戦火で焼失。さらに天正年間(1573~92)長宗我部の兵火によって炎上し、万治4年(1661)阿波藩主・蜂須賀光隆によって再興された。しかし、この本堂も昭和43年(1968)年の火災で焼失し、現在の本堂は同46年(1971)の再建である。
大正5年(1916)正式名称を妙照寺から井戸寺に改めた。
御自刻の石像は「日限大師」と呼ばれ、日を限って祈願すれば利益があるという。
参考:七仏薬師如来とは
七仏薬師如来については『薬師瑠璃光七仏本願功徳経』に説かれている。
大乗仏教では、我々の世界(娑婆世界〔しゃばせかい〕)の他にも数多くの世界があり、それぞれに一人の仏がいると考えられている。その中でも特に有名なのが西にある極楽世界の阿弥陀仏と東にある浄瑠璃世界〔じょうるりせかい〕の薬師如来(薬師瑠璃光如来)である。
浄瑠璃世界(浄瑠璃国)は娑婆世界から東へ7番目の世界で、浄瑠璃世界を含む七つの世界にそれぞれ仏がいる。すなわち、
・光勝国〔こうしょうこく〕の善名称吉祥王如来〔ぜんみょうしょうきちじょうおうにょらい〕
・妙宝国〔みょうほうこく〕の宝月智厳光音自在王如来〔ほうげつちごんこうおんじざいおうにょらい〕
・円満香積国〔えんまんこうしゃくこく〕の金色宝光妙行成就王如来〔こんじきほうこうみょうぎょうじょうじゅおうにょらい〕
・無憂国〔むゆうこく〕の無憂最勝吉祥王如来〔むゆうさいしょうきちじょうおうにょらい〕
・法幢国〔ほうどうこく〕の法海雷音如来〔ほうかいらいおんにょらい〕
・善住法海国〔ぜんじゅうほうかいこく〕の法海勝慧遊戯神通如来〔ほうかいしょうえゆげじんづうにょらい〕
・浄瑠璃国〔じょうるりこく〕の薬師瑠璃光如来〔やくしるりこうにょらい〕
以上の七仏を一体と見なし、七仏薬師と称する。七仏は薬師如来の分身であるともいう(そうではないという説もある)。
一般には薬師如来の光背に6体あるいは7体の仏像を配することが多いが、井戸寺の場合は同じ大きさの仏像を7体安置する。