江戸十大祖師(江戸十祖師)とは、江戸市中十ヶ寺の高名なお祖師様(日蓮聖人)を巡拝するというもので、江戸時代には大変盛んだったようだ。現在はそれほど盛んではなく、霊場としての特別な活動もないようだ。しかし、本所法恩寺のご住職の話では、近年、十大祖師巡りということで御首題をいただきに参拝する人が増えているとのことである(平成22年の参拝時)。
江戸十祖師の御首題
江戸十祖師について
江戸の町民には日蓮宗の信者が多かったようである。日蓮宗において、庶民の厄除けや家内安全・商売繁盛といった現世利益に対する願いを引き受けたのが諸天善神(鬼子母神や毘沙門天、大黒天など)に対する信仰とお祖師様(日蓮聖人)に対する祖師信仰であった。その流れの中で江戸十大祖師巡りも発生したのであろう。
各寺院の分布を見ると、浅草地域が4ヶ寺でもっとも多い(本覚寺、長遠寺、妙音寺、幸龍寺。ただし幸龍寺は世田谷区北烏山に移転)。次いで下谷地域が3ヶ寺(瑞輪寺、宗林寺、宗延寺。ただし宗延寺は杉並区堀ノ内に移転)、深川(浄心寺)・本所(法恩寺)・牛込(幸國寺)が各1ヶ寺で、下町に集中していることがわかる。
江戸十大祖師については、ほとんど資料がない。本所法恩寺のご住職のお話しでは、学者などの研究もなく、ほとんどわからないそうだ。また、谷中の宗林寺のご住職は、後に堀ノ内の厄除祖師として名高くなる妙法寺が入っていないことから、妙法寺が広く信仰を集めるようになる以前、たぶん元禄の頃に始まったのではないかとおっしゃっていた。
参拝の順番は特に決まっていないようである。上の御首題は明治22年(1889)の『妙宗御鬮絵鈔』に記載されている順番である。幸龍寺と宗延寺が元の所在地にあった時代、深川の浄心寺から始めて巡りやすい順番になっているようだ。
江戸十大祖師の各寺院
法苑山 浄心寺 通称:深川浄心寺 祖師像:除災祖師 所在地:東京都江東区平野二丁目 |
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平河山 法恩寺 通称:本所法恩寺 所在地:東京都墨田区太平一丁目 |
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妙祐山 幸龍寺 通称:田甫の幸龍寺 所在地:東京都世田谷区北烏山五丁目 |
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龍鳴山 本覚寺 通称:日限本覚寺 祖師像:日限祖師 所在地:東京都台東区松が谷二丁目 |
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伎楽山 妙音寺 通称:池の妙音寺 所在地:東京都台東区松が谷一丁目 |
安立山 長遠寺 通称:土富店長遠寺 祖師像:土富店祖師 所在地:東京都台東区元浅草二丁目 |
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報新山 宗延寺 通称:下谷宗延寺 祖師像:読経祖師 所在地:東京都杉並区堀ノ内三丁目 |
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慈雲山 瑞輪寺 通称:谷中瑞輪寺 祖師像:安産飯匙祖師 所在地:東京都台東区谷中四丁目 |
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妙祐山 宗林寺 通称:谷中宗林寺・萩寺 祖師像:舟守祖師 所在地:東京都台東区谷中三丁目 |
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正定山 幸國寺 通称:布引幸國寺 祖師像:布引祖師 所在地:東京都新宿区原町二丁目 |