十夜ヶ橋は、弘法大師御野宿所として名高い番外札所である。弘法大師が四国を巡錫された折、宿を借りようとしたが、泊めてくれる家がなかった。やむなく橋の下で一夜を過ごしたが、十夜の長さにも感じられるほどであったため「ゆきなやむ浮世の人を渡さずば 一夜も十夜の橋と思ほゆ」との歌を詠み、それが橋の名になったという。
名称 | 十夜ヶ橋 |
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正法山 永徳寺 十夜ヶ橋大師堂 | |
御本尊 | 弥勒菩薩 弘法大師 |
本尊真言 | おん まいたれいや そわか |
御詠歌 | ゆきなやむ浮世の人を渡さずば 一夜も十夜の橋と思ほゆ |
所在地 | 愛媛県大洲市東大洲1808 [Mapion|googlemap] |
最寄り駅 | 大洲(JR予讃線) バス停:十夜ヶ橋 |
公式サイト | https://sites.google.com/site/toyogahashi/ |
縁起・沿革
十夜ヶ橋は四国別格二十霊場の第8番で、弘法大師御野宿所として名高い。本坊は大洲市徳森の正法山永徳寺。
現在は国道56号線の橋となっており、橋の下には横になって休む弘法大師の石像がある。橋のたもとには永徳寺の境外仏堂・十夜ヶ橋大師堂と納経所が建っている。
十夜ヶ橋については、つぎのような延喜が伝えられている。
弘法大師が当地を巡錫された際、一夜の宿を借りようとしたが、泊めてくれる家がなかった。そこで、やむなく小川にかかる橋の下で一夜を過ごされたが、一夜が十夜のように感じられたという(公式サイトでは配慮のためか、近くに民家がなかったとしている)。
このような艱難をうけられるについても、大師は六道輪廻の世界を行き悩む衆生を常楽の彼岸へ渡そうという衆生済度の思いを強くし、「ゆきなやむ浮世の人を渡さずば 一夜も十夜の橋と思ほゆ」との歌を詠まれたという。
後の人々が大師の遺徳を偲んだのが、十夜ヶ橋大師堂のはじまりである。また、四国を巡るお遍路さんが橋の上では杖をつかないという風習もここから始まった。
古くからの番外札所だったようで、『空性法親王御巡行記』にも十夜ヶ橋に参拝したことが記されている。
本坊は正法山永徳寺は真言宗御室派で、十夜ヶ橋から1.5kmほど離れている。千手観世音菩薩を本尊とする。火災で記録が焼失したため開創などについては詳らかでないが、室町時代の永徳年間(1381~84)に創建され、寺号もそれに因むと伝えられる。享保12年(1727)秀意によって再興された。弘化3年(1846)建造の旧本堂が老朽化したため、平成16年(2014)改築された。
かつて、十夜ヶ橋の納経は永徳寺で行っていたが、昭和の後半、十夜ヶ橋大師堂の隣に納経所を設け、そちらで納経を行うようになった。弥勒菩薩を祀り、十夜ヶ橋永徳寺と通称されている。
納経(御朱印)
(1)平成元年拝受、別格8番としての納経。揮毫は弘法大師を表す弥勒菩薩の種字「ユ」に「高祖遍照尊」。中央の宝印は蓮華座上の火焔宝珠に梵字の「ユ」。右上の印は「四国別格第八番」、左下は「十夜ヶ橋永徳寺」。
(2)平成21年拝受、番外札所としての納経。揮毫と中央の宝印は平成元年拝受のものと同じ。右上の印は「弘法大師御野宿所」、左下は「十夜ヶ橋永徳寺」。
明治時代の納経
(1)明治38年の納経。当時は本坊・永徳寺で納経を行っていた。揮毫は「奉納経」「弘法大師」「いよ 永徳寺」。中央の法印は蓮華座上の火焔宝珠に弥勒菩薩の種字「ユ」。右上の印は「とやかはし(十夜ヶ橋)」、左下は「正法山永徳寺」。
写真帖
本坊・正法山 永徳寺
メモ
十夜ヶ橋は、車でも徒歩でも必ず通過するところであるため、数ある番外札所の中でも、たいていのお遍路さんが参拝する代表的な札所である。古くから知られた番外札所であるにも関わらず、古い納経帳にあまり納経が見られないのは、本坊までの移動が負担になったからかもしれない。
橋の下の御野宿所では、修行として野宿をすることができるそうだ。現在は十夜ヶ橋大師堂の境内に通夜堂も設けられている。
国道56号線の橋なので、交通量が多いのはしかたがないのだが、さらに橋の上には高速道路が通っており、私が初めて参拝した平成元年からでも、ずいぶん雰囲気が変わってしまっている。何とも残念なことである。
十夜ヶ橋永徳寺の概要
名称 | 正法山 永徳寺 境外仏堂 十夜ヶ橋大師堂〔とよがはし だいしどう〕 |
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通称 | 十夜ヶ橋 永徳寺〔とよがはし えいとくじ〕 |
御本尊 | 弥勒菩薩 弘法大師 |
所在地 | 愛媛県大洲市東大洲1808番地 |
創建年代 | 不詳 |
開山 | - |
宗派等 | 真言宗御室派 |
巡拝 | 四国別格8番 南予七福神(福禄寿尊) |
永徳寺(本坊)の概要
山号 | 正法山〔しょうぼうざん〕 |
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寺号 | 永徳寺〔えいとくじ〕 |
院号 | - |
御本尊 | 千手観世音菩薩 |
所在地 | 愛媛県大洲市徳森1296番地 |
創建年代 | 永徳年間(1381~84) |
開山 | 不詳 |
宗派等 | 真言宗御室派 |
交通アクセス
□JR予讃線「大洲駅」よりバス
■宇和島バス鹿野川経由野村行き「十夜ヶ橋」下車すぐ