姫坂神社は、古くは「姫の宮」と称し、日吉郷一宮として崇敬された延喜式内社である。国司・守護職などの崇敬を受け、江戸時代には今治藩の祈願所とされた。毎年御蔵米が寄進され、雨乞いの祈祷に際しては藩主の参拝があった。古くより交通守護、開運、安産の神として信仰を集めているという。
正式名称 | 姫坂神社〔ひめさかじんじゃ〕 |
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御祭神 | 市杵島比売命 |
社格等 | 式内社(名神大) 旧県社 |
鎮座地 | 愛媛県今治市宮下町3-1504 [Mapion|googlemap] |
御朱印
(1)平成19年拝受の御朱印。上の朱印は三つ盛二重亀甲に花菱の神紋。下は「姫坂神社」。
御由緒
御祭神
■市杵島比売命
宗像三女神のうちの一柱であり、安芸の厳島神社の主祭神。弁財天と同一視される。神紋などからも厳島神社との関連がうかがわれる。
出口延経の『神名帳考証』は屋船豊宇気姫とするが、根拠はよくわからない。多くの資料は市杵島比売命とし、特にそれを問題にしてはいないようだ。特に『特選神名牒』などは、姫坂神社の御祭神が市杵島姫命であることを根拠として、多伎神社の主祭神を同じ宗像三女神の多伎都比売命であろうとしている。
御由緒
姫坂神社は、古くは「姫の宮」と称し、太古より泉川のほとりの姫宮の地(現在の南日吉町)に鎮座していたと伝えられる。現社地に遷座したのは江戸時代(神社の掲示では二百数十年前)のことである。
一説には町谷村(今治市町谷)の姫坂神社(三嶋神社に合祀)、あるいは上神宮村(今治市上徳)の姫坂神社(上徳の三島神社の付近がその跡地とされる)が旧地であるともいう。
創建年代は不詳だが、延喜の制では祈年の国幣に預かった。『伊予国神名帳』には「正四位 姫坂明神」とある。日吉郷一宮として、国司・守護職・領主から庶民に至るまで広く崇敬を受けた。日吉郷は、市制施行当時の今治市域に相当する地域である。
江戸時代には今治藩の祈願所となった。毎年、御蔵米が献納され、雨乞いの祈願のたびに藩主が参拝した。享保18年(1733)には藩主が江戸で立願のことがあり、堀江郡太夫が代参。また、参勤の武士が道中の無事を祈願して常夜灯を寄進するなど信仰を集めた。
大正7年(1918)県社に昇格。昭和20年(1945)空襲により焼失、現在の社殿は昭和43年(1968)に再建されたものである。
社格に関する問題
延喜式神名帳では、越智郡七座は大三座・小四座とされ、大山祇神社、姫坂神社、多伎神社が名神大社となっている。ところが、九條本などでは大二座・小五座となっており、さらに大三座・小四座では、南海道の総数(大29座、小134座)とは数が合わなくなることなどから、大社2座、小社5座の誤りであろうとされる。
臨時祭式の名神祭条には、大山祇神社だけが記載され、姫坂神社と多伎神社は見えない。さらに、多伎神社は国史に叙位の記録があるのに対し、姫坂神社は記録がない。そのため、姫坂神社は小社だったのではないかとされる。
明治初頭の社格については、社頭の掲示や愛媛県神社庁のサイトでは「明治41年郷社に昇格」とある。一方、『明治神社誌料』は「明治四年十月郷社に列す」とある。『特選神名牒』は「村社」とした上で、明治14年(1881)の神社明細帳では郷社となっていることを注記している。明治14年時点で郷社だったことは間違いないと思われる。
『特選神名牒』が明治7年から9年にかけて編纂されたことを考えると、当初は村社に列格し、明治14年までに郷社に昇格したのかもしれない。社頭掲示などの「明治41年」は「明治14年」の誤りではないだろうか。
境内社
青木神社
御祭神は少彦名神。かつては現在の北日吉町一丁目に鎮座していた。少彦名神が滞在した古跡に小千国造が神籬を立てて祭祀を行い、その後、社殿を造営したと伝えられる。江戸時代には藩主と祈願所とされた。また、咳の守護神として信仰を集め、祈願と感謝のために数多くの草履が奉納されていたという。明治42年(1909)姫坂神社境内に遷座した。
大己貴神社
中央に大己貴神社、向かって右に大山祇神社、左に山王神社を祀る。いずれも明治42年に遷座・合祀された。
大己貴神社は一般に荒神様と呼ばれる。宮ノ下・本村城台・新屋敷・八軒家・鯉池・今城・横畑の7地区の守護神が合祀されている。毎年一度、地区ごとの氏子で大祭が行われ、御當祭りの神事も継承されている。
大山祇神社は、宮ノ下・八軒家から遷座・合祀された。
山王神社は山王権現社、あるいは日吉山王社とも称し、元は泉川町に祀られていた。
写真帖
メモ
JR今治駅から徒歩10分ほど、浅川のほとりに鎮座する。朱色の欄干が目に鮮やかな弥栄橋を渡と一の鳥居がある。参拝時は平日の午後で、東側にある県立今治北高校からクラブ活動に励む生徒の声が聞こえてきた。西側の丘の上には天守閣のような建物が見えるが、実はお城の形をしたマンションだという。
社殿は丘の中腹に建つ。拝殿は入母屋造千鳥破風の瓦葺き、拝殿は銅板葺きの流造。姫坂の社号に相応しい端正な社殿である。
宮司さんにお話を聞くと、本務社は多伎神社だが、普段は姫坂神社に常駐しているとのこと。なので、多伎神社の御朱印もこちらでいただくことができる。ただし、初めての参拝時はそのことを知らなかったため、姫坂神社の御朱印のみをいただいた。
姫坂神社の概要
名称 | 姫坂神社 |
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旧称 | 姫の宮 |
御祭神 | 市杵島比売命〔いちきしまひめのみこと〕 |
鎮座地 | 愛媛県今治市宮下町三丁目1504番地 |
創建年代 | 不詳 |
社格等 | 式内社 旧県社 |
延喜式 | 伊豫國越智郡 姫坂神社 名神大 |
例祭 | 5月10日 |
神事・行事 | 1月1日/歳旦祭 2月17日/祈年祭 旧2月上午の日/初午祭 4月第3日曜日/荒神社御當祭(御頭渡し) 5月第4日曜日/荒神社御當祭(御頭渡し) 7月17日/夏祭(輪越しさん) 10月23日/山王神社例祭 10月最終日/青木神社御當祭(御頭渡し) 11月23日/新嘗祭 ※『平成「祭」データ』による |
交通アクセス
□JR予讃線「今治駅」より徒歩約10分