明治後期のはがきアルバムに収められたはがき・絵はがきの御朱印の紹介。102枚収められているうちの35枚目から68枚目まで。ただしアルバムに収められた順番で、拝受した順番というわけではない。このはがきアルバムには明治39年から41年にかけてのはがき・絵はがきが収められているが、ここに掲載しているものは、すべて明治39年の拝受と思われる。
凡例:
1.台紙は、絵はがき・官製はがき・私製はがき・白紙(はがき大に切った紙)の4種に分類する。なお、収められている絵はがきはすべて私製はがきである。
2.絵はがき・官製はがき・私製はがきのうち、郵便物として投函されたものは「使用済」、投函されていないないものは「未使用」とする。
3.寺社名・祭神・本尊・宗派・所在地等の情報は確認できる範囲において当時のもので、現在と違っている場合は括弧内に現在の情報。社格も当時のものだが、その後昇格した場合は括弧内に昭和29年時点の最終的な社格と昇格年を記述する。
土師神社(道明寺天満宮)
土師神社(道明寺天満宮)
祭神:菅原道真・天穂日命・菅原覚寿
社格:郷社
所在地:大阪府南河内郡道明寺村(大阪府藤井寺市)
※昭和27年に道明寺天満宮と改称。
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:明治39年11月3日
※拝受は南部氏
■朱印は「土師社印」。この印は大正から昭和初期の集印帖にも押されている。
橿原神宮
橿原神宮
祭神:神武天皇・媛蹈韛五十鈴媛命
社格:官幣大社
所在地:奈良県高市郡白橿村(奈良県橿原市
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■朱印は「橿原神宮」。大正時代の集印帖にこれとよく似た印が押されており、当時御朱印として使われていた印と思われる。
仁徳寺(学文路刈萱堂)
如意珠山 仁徳寺 ※通称:学文路刈萱堂
本尊:刈萱道心・石童丸・千里ノ前
宗派:真言宗高野派(高野山真言宗)
所在地:和歌山県伊都郡学文路村(和歌山県橋本市)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に梵字「キリーク」、阿弥陀如来の種字か。右の印は「學文路刈萱古跡」、左下は「刈萱堂仁徳寺」。
西国28番 成相寺
成相山 成相寺
本尊:聖観世音菩薩
宗派:真言宗高野派(真言系単立)
所在地:京都府与謝郡府中村(京都府宮津市)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に聖観音の種字「サ」、この印は昭和初期の納経帳にも押されている。右の印は「西國廿八番丹後國」で、明治の納経帳に押されていた。
西国24番 中山寺
紫雲山 中山寺
本尊:十一面観世音菩薩
宗派:真言宗御室派準別格本山(真言宗中山寺派大本山)
所在地:兵庫県川辺郡長尾村(兵庫県宝塚市)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に十一面観音の種字「キャ」。右上の印は「西國廿四番」、左下は「中山寺役者」。いずれも当時の納経帳に押されていた印である。
西国8番 長谷寺
豊山 長谷寺
本尊:十一面観世音菩薩
宗派:新義真言宗豊山派総本山(真言宗豊山派総本山)
所在地:奈良県磯城郡初瀬町(奈良県桜井市)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:明治39年11月3日
■上の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に十一面観音の種字「キャ」。右の印は「西國第八番」、下は「長谷寺本堂印」。いずれも当時の納経帳に押されていた印である。一銭五厘の切手を貼り、初瀬郵便局の明治39年11月3日の消印が押してある。
西国6番 南法華寺
壷阪山 南法華寺 ※通称:壺阪寺
本尊:十一面千手観世音菩薩
宗派:新義真言宗豊山派(真言系単立)
所在地:奈良県高市郡高取町
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■右上の宝印は波の上の壺に千手観音の種字「キリーク」。右上の印は「第六番 大和国 壺坂山」、下は「壺坂山」。これらの印は当時の納経帳に押された印とは異なっている。壺に種字の宝印は、奥之院の御朱印に使われている例がある。下の「壺坂山」の印は、明治末から大正初期の絵はがきに押されている例があり(おかもと氏の「昔の集印帖」を参照)、はがきや絵はがきに押す印として納経帳の印とは区別されていた可能性がある。
西国6番 南法華寺の御影
壷阪山 南法華寺 ※通称:壺阪寺
本尊:十一面千手観世音菩薩
宗派:新義真言宗豊山派(真言系単立)
所在地:奈良県高市郡高取町
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■私製はがきに南法華寺の御影が貼ってある。
智恩寺(切戸文殊)
天橋山 智恩寺 ※通称:切戸文殊
本尊:文殊菩薩
宗派:臨済宗妙心寺派
所在地:京都府与謝郡吉津村(京都府宮津市)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:明治39年11月4日
※拝受は徳田氏
■右上の朱印は「日本弎景」、下は「天橋」か。
高野山奥之院
高野山 金剛峯寺 奥之院
本尊:弘法大師
宗派:真言宗高野派総本山(高野山真言宗総本山)
所在地:和歌山県伊都郡高野村(和歌山県伊都郡高野町)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■右上の印は「「高野山奥院」、下の宝印は「金剛峯寺役所」。同時期の納経帳にこの印が押されている。
四国80番 讃岐国分寺
白牛山 国分寺
本尊:十一面千手観世音菩薩
宗派:真言宗大覚寺派(真言宗御室派別格本山)
所在地:香川県綾歌郡端岡村(香川県高松市)
台紙:官製はがき(使用済)
投函日:明治39年11月1日
※拝受は山本氏
■文字部分は版木押しで「讃岐/國分寺大悲殿/惣目代」。中央の宝印は「仏法僧寶」の三宝印。右上の印は「四國八十番」、左下は「千手院」。朱印はいずれも当時の納経帳に押されていたもの。版木も江戸時代から明治にかけて使われていたものである。
西国5番 葛井寺
紫雲山 葛井寺
本尊:十一面千手観世音菩薩
宗派:真言宗御室派
所在地:大阪府南河内郡藤井寺村(大阪府藤井寺市)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:明治39年11月3日
※拝受は南部氏
■中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に千手観音の種字「キリーク」。右の印は「紫雲山」、左は「守護」。当時の納経帳にこれらの印は使われてないが、中央の宝印については大正から昭和初期にかけての集印帖にほぼ同じ印が押されている。納経帳とはがきで印を使い分けていた可能性がある。
金刀比羅宮
金刀比羅宮
祭神:大物主神・崇徳天皇
社格:国幣中社
所在地:香川県仲多度郡琴平町
台紙:絵はがき(使用済)
投函日:明治39年11月4日
※拝受は森氏
■朱印は「金刀比羅宮参拝印」。大正時代の集印帖に同じ印が押されている例がある。メモはお礼の言葉のようだ。
■絵はがきは「讃岐金刀比羅宮御本社」。
西国28番 成相寺
成相山 成相寺
本尊:聖観世音菩薩
宗派:真言宗高野派(真言系単立)
所在地:京都府与謝郡府中村(京都府宮津市)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:明治39年8月13日
※拝受したのは別人だが判読できない
■右の印は「西國廿八番丹後國」、中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に聖観音の種字「サ」。上の成相寺のはがきと同じ印である。
西国13番 石山寺
石光山 石山寺
本尊:如意輪観世音菩薩
宗派:真言宗東寺派別格本山(東寺真言宗大本山)
所在地:滋賀県滋賀郡石山町(滋賀県大津市)
台紙:絵はがき(未使用)
拝受日:不明
■右の印は「西國拾三番」、左の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に如意輪観音の種字「キリーク」。どちらも当時の納経帳に押されていた印である。
■絵はがきは近江八景の一「三井寺の晩鐘」。
永観堂禅林寺
聖衆来迎山 禅林寺 ※通称:永観堂
本尊:阿弥陀如来
宗派:浄土宗西山派総本山(浄土宗西山禅林寺派総本山)
所在地:京都市上京区(京都市左京区)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■右上の宝印は「佛法僧寶」の三宝印。左上は「總本山永観堂禅林寺」、左下は「惣本山永観堂」。大正から昭和初期にも御朱印として使われている。
仁和寺
大内山 仁和寺 ※通称:御室御所
本尊:阿弥陀如来
宗派:真言宗御室派大本山(総本山)
所在地:京都府葛野郡花園村(京都市右京区)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■上の印は「忎和寺」、「忎」は「仁」の異体字。この印は当時の納経帳や昭和初期の集印帖に使われている例がある。下の印は桜の花、御室桜に因むものであろう。
四国番外 海岸寺
経納山 海岸寺
本尊:聖観世音菩薩
宗派:真言宗大覚寺派(真言宗醍醐派準別格本山)
所在地:香川県仲多度郡白方村(香川県仲多度郡多度津町)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■朱印は「弘法大師出化初因縁之霊跡讃岐國多度郡屏風浦海岸寺」。当時の納経帳に押されていた印である。現在もよく似た印が使われているが、昭和初期以降「多度郡」が「仲多度郡」に変わっている。因みに那珂郡と多度郡が合わせて仲多度郡が発足したのは明治32年。
天龍寺
霊亀山 天龍資聖禅寺
本尊:釈迦如来
宗派:臨済宗天龍寺派大本山
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■朱印は「天龍資聖禪寺之印」。
仁和寺
大内山 仁和寺 ※通称:御室御所
本尊:阿弥陀如来
宗派:真言宗御室派大本山(総本山)
所在地:京都府葛野郡花園村(京都市右京区)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■上の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に阿弥陀如来の種字「キリーク」。下は「大内山仁和寺鑑章」。どちらも当時の納経帳に使われていた印である。
亀山八幡宮(下関)
亀山八幡宮
祭神:応神天皇・仲哀天皇・神功皇后・仁徳天皇
社格:県社
所在地:山口県下関市
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■朱印は「長門圀龜山宮之神璽」。大正から昭和初期の集印帖にこの印が使われている例がある。
西国9番 興福寺 南円堂
興福寺 南円堂
本尊:不空羂索観世音菩薩
宗派:法相宗大本山
所在地:奈良県奈良市
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■上の宝印は上り藤に不空羂索観音の種字「モ」。右は「西國第九番」、下は「興福寺南圓堂」。いずれも当時の納経帳に押されていた印である。
東大寺 二月堂
東大寺 二月堂
本尊:十一面観世音菩薩
宗派:華厳宗大本山
所在地:奈良県奈良市
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■上の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に十一面観音の種字「キャ」。下の印は「東大寺印」、右は「二月堂」。
出水神社
出水神社
祭神:細川藤孝・細川忠興・細川忠利・細川重賢
社格:県社
所在地:熊本県飽託郡出水村(熊本市中央区)
台紙:絵はがき(未使用)
拝受日:不明
■朱印は「出水神社」。昭和初期の集印帖にこれと同じ印が押されている。
■絵はがきは「肥後熊本水前寺」。水前寺成趣園は出水神社の境内地であり、写真の右側に見える鳥居の奥に社殿がある。
本妙寺(熊本)
発星山 本妙寺
本尊:三宝尊
宗派:日蓮宗
所在地:熊本県飽託郡花園村(熊本市西区)
台紙:絵はがき(未使用)
拝受日:不明
■上の朱印は「肥後之圀本妙寺印」、下は「發星山本妙寺」。
■絵はがきは「肥後本妙寺」、浄地廟(加藤清正の霊廟)の写真である。
生国魂神社
生国魂神社
祭神:生島神・足島神
社格:官幣大社
所在地:大阪市東区(大阪市天王寺区)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■右上の朱印は「官幣大社」、左下は「生國魂神社印」。
高津宮
高津宮
祭神:仁徳天皇・仲哀天皇・応神天皇・神功皇后・葦姫天皇・履中天皇
社格:府社
所在地:大阪市南区(大阪市中央区)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■朱印は「高津宮神符」。
西国26番 一乗寺
法華山 一乗寺
本尊:聖観世音菩薩
宗派:天台宗
所在地:兵庫県加西郡下里村(兵庫県加西市)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:不明
■中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に聖観世音菩薩の種字「キリーク」。右上の印は「西國廿六番」、下は「一乗寺印」。
藤崎八幡宮(藤崎八旛宮)
藤崎八幡宮(藤崎八旛宮)
祭神:応神天皇・住吉大神・神功皇后
社格:県社(国幣小社/大正4年)
所在地:熊本県熊本市(熊本市中央区)
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:明治39年9月28日
※拝受は藤井氏
■中央の朱印は「藤崎宮印」。
錦山神社(加藤神社)
錦山神社(加藤神社)
祭神:加藤清正公
社格:県社
所在地:熊本県熊本市(熊本市中央区)
※加藤神社への改称は明治42年
台紙:私製はがき(未使用)
拝受日:明治39年9月27日
※拝受は藤井氏
■朱印は「錦山神社」。
四国78番 郷照寺
佛光山 郷照寺
本尊:阿弥陀如来
宗派:時宗
所在地:香川県綾歌郡宇多津町
台紙:官製はがき(未使用)
拝受日:不明
■下の宝印は「南無阿彌陀佛」。右上は「第七十八番」、左上は「道場寺(郷照寺の旧称)」。いずれも当時の納経帳に押されていた印である。
普賢寺(光市)
峨眉山 普賢寺
本尊:普賢菩薩
宗派:臨済宗建仁寺派
所在地:山口県熊毛郡室積町(山口県光市)
台紙:官製はがき(使用済)
拝受日:明治39年9月28日
※拝受は山本氏
■上の宝印は普賢菩薩の御姿に「防州室積峩眉山」。下は「普賢寺印」。
■メモは右に「山口縣旅行中ノ紀念トシテ□□/室積港普賢寺ニテ押印」左に「本尊普賢大菩薩ハ昔シ昔シの其昔シ、人皇六十六代一條帝ノ御宇、播州書寫山ノ高僧性空上人當国歴遊中、海中ヨリ発見セルモノニシテ日本唯一ノ霊像トシテ知ラル。」
四国80番 讃岐国分寺
白牛山 国分寺
本尊:十一面千手観世音菩薩
宗派:真言宗大覚寺派(真言宗御室派別格本山)
所在地:香川県綾歌郡端岡村(香川県高松市)
台紙:官製はがき(未使用)
拝受日:不明
■文字部分は版木押しで「讃岐/國分寺大悲殿/惣目代」。中央の宝印は「仏法僧寶」の三宝印。右上の印は「四國八十番」、左下は「千手院」。当時の納経帳に押されていたもので、上の山本氏が拝受した讃岐国分寺の御朱印と同じである。
福祥寺(須磨寺)
上野山 福祥寺 ※通称:須磨寺
本尊:聖観世音菩薩
宗派:真言宗高野派(真言宗須磨寺派大本山)
所在地:兵庫県武庫郡須磨村(神戸市須磨区)
台紙:官製はがき(使用済)
拝受日:明治39年仲秋彼岸(9月24日)
※拝受は森氏
■宝印は蓮華座上の火炎宝珠に聖観音の種字「サ」と「福祥」。右下の印は、上が白抜きで「上野山」、下が「須磨寺」。メモは「すま寺に詣で、敦盛の遺跡を訪ねた」。
■明治39年(1906)はがきアルバムの御朱印(1)
■明治39年(1906)はがきアルバムの御朱印(2)
■明治39年(1906)はがきアルバムの御朱印(3)