武蔵阿蘇神社は、古くは阿蘇宮・阿蘇大明神などと称された羽村の鎮守。社伝によれば、推古天皇9年(601)神託により清地を築き、健磐龍命より賜った霊物(玉)を鎮め祀ったことに始まる。承平年間(931~38)平将門によって初めて社殿が造営された。その後、将門を討った藤原秀郷も神託を受けて社殿を造営寄進、御神木のシイの木はこの時秀郷が手植えしたものと伝えられる。
正式名称 | 阿蘇神社〔あそじんじゃ〕 |
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通称 | 武蔵阿蘇神社〔むさし あそじんじゃ〕 |
御祭神 | 健磐龍命 阿蘇都媛命 速瓶玉命 他九柱 |
社格等 | 旧村社 |
鎮座地 | 東京都羽村市羽加美4-6-7 [Mapion|googlemap] |
最寄り駅 | 羽村(JR青梅線) 小作(JR青梅線) バス停:一峰院 |
御朱印
(1) | (2) |
(1)平成17年拝受の御朱印。朱印は「天津……」のようだが判読できない。
(2)平成29年拝受の御朱印。中央の朱印は平成17年のものと同じ。左下の印は「阿蘇神社之印」。
御由緒
御祭神
肥後国一宮・阿蘇神社と同じく健磐龍命と家族神12柱を祀る。また、元の境内社・八雲神社に祀られていた素盞嗚尊(牛頭天王)を合祀している。
主祭神三座
■健磐龍命…神武天皇の皇子・神八井耳命の皇子神で、阿蘇大神と称される。
■阿蘇都媛命…阿蘇大神の妃神。
■速瓶玉命…阿蘇大神の第一皇子神。
配祀九座
■国龍神…阿蘇都媛命の父神で、吉見神・彦八井耳玉命とも称する。
■比咩御子神…国龍神の妃神。
■彦御子神…速瓶玉命の第一皇子で、惟人命・八井耳玉命とも称する。
■若比咩神…彦御子神の妃神。
■新彦神…国龍神の長子。
■新比咩神…新彦神の娘神。
■若彦神…新彦神の御子、新比咩神の弟神。
■弥比咩神…新彦神の妃神。
■金凝神…阿蘇大神の叔父、人皇第二代綏靖天皇。
合祀
■素盞嗚尊…元境内社・八雲神社の御祭神
御由緒
武蔵阿蘇神社は羽村の鎮守で、古くは「安所」「安曽」「阿所」などと書いて「あそ」と読んだようである。江戸時代には阿蘇宮・長淵郷総社龍水山阿蘇宮・阿蘇大明神などと称された。
社伝によれば、推古天皇9年(601)5月、大雨で多摩川が氾濫し、村里が流失した。そこに老翁が現れ、宮司の先祖に霊物(玉)を授け、これを水中に鎮めると水が乾き、水害から救われると告げた。里人は大変喜んで信心を起こし、清地を築いて霊物を斎き祀った。これが当社の創建で、老翁は建磐龍命であったとされる。
承平元年(931)6月8日、大雪が降って川の水が氾濫したが、神主が霊物を鎮めると洪水が治まった。これを平将門が伝え聞き、当社に参詣して初めて社殿を造営したという。さらに天慶3年(940)将門の乱の平定後、神託により藤原秀郷が社殿を再興した。御神木の椎の木(東京都の天然記念物)は、この時秀郷が自ら植えたものと伝えられる。
その後も里人をはじめ領主・武将たちから深く崇敬され、永承13年(1516)小田原北条氏が神領20貫文を寄進した。
天文5年(1536)平将門の後裔を称する三田氏の一門・三田掃部助定重が社殿を修造した。この時の棟札が現存しており、文面に「七度造立」とあることから、これ以前に6回社殿の造営が行われたことがわかる。
慶長5年(1600)関ヶ原の合戦に際し、陣中に武運長久の神符を献上した。その後、家康が鷹狩りの折に参拝して川狩りを楽しみ、馬場2丁四方(約12,000㎡)を寄進したという。慶安2年(1649)徳川家光より先規に従って朱印地13石を寄進された。
延宝4年(1678)社殿を再建。これが都の有形文化財に指定されている元座の本殿である。棟札には将門建立以来七度目也と記されているという。
安政6年(1859)多摩川の大洪水のため、社地・社領・神主屋敷・鳥居などが流失した。そこで寺社奉行松平伊豆守の許可を得、江戸府内と武蔵・下総での年3回の神札頒布を行った。
明治2年(1869)阿蘇神社と改称。明治34年(1901)村社に列格した。
昭和62年(1987)本殿の解体修理を行うとともに、社殿(拝殿・幣殿・本殿覆屋)を新築した。
文化財
■阿蘇神社本殿(東京都指定有形文化財)
一間社流造こけら葺。天文5年(1536)など9枚の棟札がある。昭和62年(1987)の解体修理により、延宝4年(1678)に再建されたものであることが確認された。正面に浜床と木階を設け、三方に縁を廻らせる。蛙股の彫刻は建築時より古い形式なので、旧社殿に用いられていた材である可能性があるという。年代の明確な江戸時代初期の神社建築として貴重なもの。現在は覆殿の中に納められている。昭和41年指定。
■阿蘇神社のシイ(東京都指定天然記念物)
樹齢800年とも1000年ともされるスダジイで、幹の周囲は6.1m、高さは約18m。社殿西側の多摩川縁にある。藤原秀郷が社殿を造営した際に手植えしたものと伝えられている。昭和6年指定。
■宮川家住宅主屋及納屋(国登録有形文化財)
阿蘇神社の宮司・宮川家の住宅。主屋の建築年代は詳らかでないが、19世紀前半のものであろうと推測されている。納屋は明治初期に建てられたもので、元は宮司の隠居所だったと伝えられている。近世から存続する社家の住宅として貴重な建築で、国土の歴史的景観に寄与しているとして登録された。
写真帖
メモ
多摩川のほとりに鎮座する。川沿いの参道を進み、石段を登ると木々の中に風格ある木造社殿が鎮座している。社地のすぐ西の多摩川の淵は「姥が渕」と呼ばれ、ここが深い年は豊年、浅い年は凶年と伝えられているそうだ。創建伝承にあるように、多摩川の治水と深く関わる神社に相応しい立地である。
武蔵阿蘇神社の概要
名称 | 阿蘇神社 |
---|---|
通称 | 武蔵阿蘇神社 |
旧称 | 阿蘇大明神 阿蘇宮 |
御祭神 | 健磐龍命〔たけいわたつのみこと〕 阿蘇都媛命〔あそつひめのみこと〕 速瓶玉命〔はやみかたまのみこと〕 〈相殿〉 国龍神〔くにたつのかみ〕 比咩御子神〔ひめみことのかみ〕 彦御子神〔ひこみことのかみ〕 若比咩神〔わかひめのかみ〕 新彦神〔にいひこのかみ〕 新比咩神〔にいひめのかみ〕 若彦神〔わかひこのかみ〕 弥比咩神〔やひめのかみ〕 金凝神〔かなこりのかみ〕 〈合祀〉 素盞嗚命〔すさのおのみこと〕 |
鎮座地 | 正東京都羽村市羽加美四丁目6番7号 |
創建年代 | 推古天皇9年(601) |
社格等 | 旧村社 |
例祭 | 10日1月 |
神事・行事 | 1月1日/元旦祭 1月22日/聖徳神社例祭(春祭) 2月3日/節分祭 2月11日/建国祭 2月28日/祈年祭 4月第2土・日曜日/春季例祭(天王祭) 6月30日/大祓(水無月祓) 8月1日/日神社例祭 9月1日/直日宮例祭 9月22日/聖徳神社例祭(秋祭) 11月23日/新嘗祭 12月31日/大祓 ※『平成「祭」データ』による |
文化財 | 〈国登録有形文化財〉文宮司宮川家住宅主屋・納屋 〈都有形文化財〉本殿 〈都天然記念物〉シイ |
交通アクセス
□JR青梅線「羽村駅」より徒歩23分
□JR青梅線「小作駅」より徒歩23分
更新履歴
2006.01.29.公開
2018.04.10.改訂、WPへ移行、御朱印・画像追加。