虎柏神社は小曽木郷の惣鎮守で、延喜式神名帳所載の虎柏神社の論社。創建年代は不詳だが、崇神天皇の御代に神地神戸を賜ったと伝えられる。天慶3年(940)源経基が諏訪上下神を勧請。その後、諏訪上下神が正殿に祀られるようになり、諏訪明神・諏訪宮と称されるようになった。明治3年(1870)虎柏神社と復称し、東相殿に祀られていた虎柏神を正殿に遷した。境内は江戸・明治期の旧態をよく留めていることから都の史跡に指定されている。
正式名称 | 虎柏神社〔とらかしわじんじゃ〕 |
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御祭神 | 大歳御祖神 惶根神 建南方命 事代主命 須佐之男命 |
社格等 | 式内論社 旧郷社 |
鎮座地 | 東京都青梅市根ヶ布1-316 [Mapion|googlemap] |
最寄り駅 | 東青梅(JR青梅線) バス停:諏訪神社前 |
御朱印
御朱印は本務社である千ヶ瀬神社の宮司様宅でいただくことができる。
(1)平成19年拝受の御朱印。中央の朱印は、「(右)諏訪大神(左)八雲大神(中央)虎柏大神御璽」。
(2)平成30年拝受の御朱印。朱印は平成19年のものと同じ。
御由緒
御祭神
神社明細帳では、大歳御祖神と惶根神を主祭神とし、建南方命・事代主命・素盞嗚命を配祀するとしている。『平成「祭」データ』は大歳御祖神・惶根神・建南方命・事代主命・須佐之男命・味須気高彦根神・倉稲魂命・天児屋根命を祭神としているが、これは末社の御祭神も含まれている。『青梅市史』によると、正殿と東西相殿に祀られる神は以下の通り。
《正殿》虎柏大神
■大歳御祖神
■惶根神
《東相殿》諏訪大神
■建南方命
■事代主命
《西相殿》八雲大神
■須佐之男命
一方、平成19年にいただいた虎柏神社のパンフレットでは大歳御祖神・惶根神・建御名方命・八坂刀売命・須佐之男命・事代主命を御祭神とし、本殿内では以下のように祀られるとしている。
《正殿》虎柏神社
■大歳御祖神(男神)
■惶根神(女神)
《東相殿》諏訪上下神社
■建御名方命(男神)
■八坂刀売命(女神)
《西相殿》八雲神社
■須佐之男命(男神)
■事代主命(男神)
虎柏大神については『惣国風土記』に「武蔵国多摩郡虎柏神社、圭田七十三束、所祭大歳御祖神也」とある。
諏訪上下神は天慶3年(940)源経基が勧請したもので、中世以来明治3年(1870)まで正殿に祀られていた。須佐之男命は天正16年(1588)浅野長政が疫神(牛頭天王)として勧請したものである。
御由緒
虎柏神社は、中世以来、諏訪宮・諏訪明神と称され、杣保を支配した三田氏の本拠地・勝沼を含む小曽木郷の惣社として崇敬された。往古、例大祭に先立って行われる御垣結の神事には、根ヶ布・乗願寺・小曽木の諸村が交替で奉祀していたという。延喜式神名帳所載の多摩郡八座の一・虎柏神社の論社である。
神社明細帳によれば「虎柏」の号は神代の霊石を御神体とすることに因む。創建年代は不詳だが、社伝によれば崇神天皇の御代に神地神戸を賜り、勅祭に預かったという。延喜の制では小社に列した。
天慶3年(940)源経基が社殿を再建し、諏訪上下神を勧請した。この時、末社の高峯神社と稲荷神社も勧請されたという。いつの頃からか諏訪上下神を正殿に祀るようになり、諏訪明神と称されるようになった。
その後も武将の崇敬篤く、永正年間(1504~20)勝沼城主の三田氏が社殿の改築を行った。天正16年(1588)浅野長政が疫神(牛頭天王)を勧請、天正18年(1590)正殿を諏訪上下神、東相殿を虎柏神、西相殿を疫神と定めた。天正19年(1591)には徳川家康より朱印地3石を賜ってる。
明治3年(1870)社号を古来の虎柏神社に復するとともに、虎柏大神を正殿に、諏訪上下神を東相殿に遷した。明治6年(1873)郷社に列格。
平成5年(1993)本殿が東京都の有形文化財、8月の例大祭の行事が同じく東京都の無形民俗文化財、神社境域が東京都の史跡に指定された。
境内社
■高峯神社
高峯山は成木街道と虎柏神社の間にそびえる小高い丘である。高峯神社は、その頂に虎柏神社と向かい合う形で鎮座している。明治の神社明細帳では高峯山神社となっている。御祭神は味耜高彦根命で、天慶年間(938~47)源経基が諏訪上下神を勧請したとき、同時に勧請されたと伝えられる。
■稲荷神社
御祭神は倉稲魂命。天慶年間(938~47)源経基が勧請したと伝えられる。勧請された時には西の相殿に祀られていたが、いつの頃からか末社として祀られるようになったという。
■藤原神社
御祭神は天児屋根命。天正年間(1573~93)旧社家・宮崎氏の中興の祖である右衛門太夫が藤原姓であったので「藤原神社」として祀ったという。
例大祭
毎年8月に行われる例大祭と一連の行事は「虎柏神社の祭礼行事」として東京都の無形民俗文化財に指定されている。
8月26日
■御殿入り祭
一年に一度の本殿の大掃除に際し、御神体としての幣束を本殿の左右に設けられた茅造りの朝日の仮屋・夕日の仮屋に遷す。午後9時、朝日の仮屋で氏子代表が幣束・神宝を持って行列を作ると、すべての灯火が消される。暗闇の中、神歌を歌いながら社殿の周囲を3周した後、幣束・神宝を本殿に納める。
8月27日
■椀飯の式
早朝、小豆飯のお高盛りと茄子の胡麻味噌和えを膳に載せ、天寧寺に奉献する。
■高峯神社祭
午前中に行われる高峯神社の例祭に、小豆飯のお高盛りと茄子の胡麻味噌和え、穴あき銭13枚を供える。
8月28日
■例祭
早朝、神饌調整のために祭主によって「お炊き上げ」が行われる。炊き上がった後、焚いた米飯を木の器3膳に盛り分ける。
■奉納相撲
午後、奉納相撲が行われる。その他、居囃子や万灯などの神賑行事があり、多くの参拝者で賑わう。
式内論社
延喜式神名帳所載の虎柏神社には、当社の他に調布市佐須町の虎狛神社を当てる説もある。『特選神名牒』『神祇志料』などは調布の虎狛神社に比定し、『神社覈録』は「地名記」を引いて当社に当てる。
写真帖
メモ
成木街道に面した鳥居から参道を歩くと、鬱蒼とした緑に覆われた境内が広がる。一帯は「江戸・明治期の旧態をよく留め、宗教的神秘性を有する独特な空間を形成している」として都の史跡に指定されている。いかにも式内の社に相応しい神域である。
虎柏神社の本務社は青梅市千ヶ瀬の千ヶ瀬神社であり、そちらで御朱印をいただくことができる。初めての参拝時、宮司さんからいろいろ話を聞くことができたが、「虎」という字がつく神社は珍しいということで、寅の年に寅年の人が寅の刻参りをしたいと連絡してきたことがあるという。場所を説明したものの、暗いし明かりもないので大丈夫かと思っていたところ、無事に参拝したというお礼の連絡があったそうだ。
虎柏神社の概要
名称 | 虎柏神社 |
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通称 | おすわさま |
旧称 | 諏訪明神社 |
御祭神 | 大歳御祖神〔おおとしみおやのかみ〕 惶根神〔かしこねのかみ〕 〈相殿〉 建南方命〔たけみなかたのみこと〕 事代主命〔ことしろぬしのみこと〕 須佐之男命〔すさのおのみこと〕 |
鎮座地 | 正東京都青梅市根ヶ布一丁目316番地 |
創建年代 | 不詳 |
社格等 | 式内社(論社) 旧郷社 |
延喜式 | 武蔵國多磨郡 虎柏神社 |
例祭 | 8月26日~28日 ※8月26日/御殿入り祭 ※8月27日/椀飯の式・高峯神社祭 ※8月28日/例大祭・奉納相撲 |
神事・行事 | 1月1日/歳旦祭 2月3日/節分祭 2月11日/祈年祭(春祭) 6月最終日曜日/八雲祭・大祓祭 8月27日/高峯神社例祭 11月23日/新嘗祭 12月31日/大祓式 |
文化財 | 〈都有形文化財〉虎柏神社本殿(附:棟札一枚) 〈都無形民俗文化財〉虎柏神社の祭礼(附:行事関係記録231点) 〈都史跡〉虎柏神社境域(附:境域関係資料2点) |
交通アクセス
□JR青梅線「東青梅駅」より徒歩18分、またはバス
■都営バス岩井堂行き・黒沢神社前循環・黒沢循環「諏訪神社前」下車徒歩すぐ
□JR青梅線「青梅駅」より徒歩30分、またはバス
■都営バス岩井堂行き・黒沢神社前循環・黒沢循環「諏訪神社前」下車徒歩すぐ
更新履歴
2008.01.06.公開
2018.05.03.改訂、WPへ移行、御朱印・画像を追加。