天保11年(1840)四国八十八ヶ所の納経帳(4)

天保11年四国納経帳表紙

この納経帳は天保11年(1840)旧11月から12月にかけて四国八十八ヶ所を巡拝したものである。冒頭に京都の仁和寺と東寺の納経があることから京都もしくはその近辺の人であろうと考えられる。四国霊場の納経は第78番道場寺(現在の郷照寺)から順打ちしており、大阪から丸亀に渡ったのではないかと思われる。

以下に伊予国の霊場の納経を見ていく。伊予国では、番外札所として小村大師庵(札始大師堂)、微笑庵(臼井御来迎)、生木地蔵、65番奥之院仙龍寺で納経している。

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伊豫の札所(観自在寺~仙龍寺)

観自在寺/稲荷大明神・龍光寺

観自在寺・龍光寺の納経

【右】40番 観自在寺
平城山 薬師院 観自在寺
本尊:薬師如来
所在地:伊予国宇和郡平城村(愛媛県南宇和郡愛南町御荘平城)

文字部分は朱の版木押しで「平城山/ベイ(薬師如来の種字)藥師如來/觀自在寺」、「いよ 子十一月十三日」の書き入れがある。中央の宝印は蓮華座上の宝珠に薬師如来の種字「ベイ」。右上の印は「第四拾番」、左下は「觀自在寺」。

【左】41番 稲荷大明神龍光寺
稲荷大明神(稲荷神社)
祭神:豊宇気姫神
稲荷山 護国院 龍光寺
本尊:十一面観世音菩薩
所在地:伊予国宇和郡戸雁村(愛媛県宇和島市三間町戸雁)

文字部分は版木押しで「奉納經/本社稲荷大明神/別當(当)龍光寺」。中央の宝印は火炎宝珠。右上の印は「四十一番」、左下の印は判読しづらいが「光」ではないかと思われる。

※稲荷大明神/龍光寺は創建当初より稲荷大明神を祀る神仏習合の霊場だったが、明治の神仏分離により稲荷神社と龍光寺に分かれ、旧本堂(本社)は稲荷神社となった。その一段下に新しい本堂を建てて龍光寺とし、本地仏の十一面観音を遷して本尊とした。この時、弘法大師の勧請と伝えられる稲荷大明神の神像も一緒に遷されている。

仏木寺/明石寺

仏木寺・明石寺の納経

【右】42番 仏木寺
一カ山 毘盧舎那院 仏木寺(※「カ」は王偏に「果」)
本尊:大日如来
所在地:伊予国宇和郡則村(愛媛県宇和島市三間町則)

墨書は「奉納經/本尊大日如来/一カ(王+果)山 佛木寺」、日付は「庚子ノ寿一月十五日」。中央の宝印は十六八重菊の御紋。右上の印は「四十二番」、左下は「佛木密寺」。

【左】43番 明石寺
源光山 円手院 明石寺
本尊:千手観世音菩薩
所在地:伊予国宇和郡明石村(愛媛県西予市宇和町明石)

墨書は「奉納/本尊千手観音/いよ源光山/明石寺」、日付は「十一月十五日」。中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に千手観音の種字「キリーク」(宝珠は3個あるように見える)。右上の印は「四十三番」、左下の印は現在も使われている印で「覚」のように見えるがよくわからない。

大宝寺/岩屋寺

大宝寺・岩屋寺の納経

【右】44番 大宝寺
菅生山 大覚院 大宝寺
本尊:十一面観世音菩薩
所在地:伊予国浮穴郡菅生村(愛媛県上浮穴郡久万高原町菅生)

墨書は「奉納/キャ(十一面観音の種字)円通殿/菅生山/大寶寺」、日付は「子十一月十七日」。中央の宝印は五七桐と十六八重菊の御紋で勅願所であることを示す。右上の印は「四拾四番」、左下は「菅生山」。

【左】45番 岩屋寺
海岸山 岩屋寺
本尊:不動明王
所在地:伊予国浮穴郡七鳥村(愛媛県上浮穴郡久万高原町七鳥)

墨書は「奉納/南無大聖不動尊/海岸山/岩屋寺」、日付は「十一月十七日」。朱印はほぼ大宝寺のものと同じで、中央の宝印が五七桐と十六八重菊の御紋、左下は「菅生山」、右上の印のみ異なっていて「四国四拾五番」。江戸時代以前、岩屋寺は大宝寺の奥之院という扱いだった。朱印は同じだが、文字の書き手は異なるように見えるため、納経も大宝寺で行っていたのか、印のみ同じで納経は岩屋寺だったのかについては判断できない。

浄瑠璃寺/八坂寺

浄瑠璃寺・八坂寺の納経

【右】46番 浄瑠璃寺
医王山 養珠院 浄瑠璃寺
本尊:薬師如来
所在地:伊予国浮穴郡浄瑠璃寺村(愛媛県松山市浄瑠璃町)

墨書は「奉拝禮/本尊醫(医)王殿/いよ/浄瑠璃寺」、日付は「十一月十八日」。中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に薬師如来の種字「ベイ」。右上の印は「四十六番」、左下は現在使われている印とよく似ており、白抜きで「藥」ではないかと思われる。

【左】47番 八坂寺
熊野山 妙見院 八坂寺
本尊:阿弥陀如来
所在地:伊予国浮穴郡浄瑠璃村(愛媛県松山市浄瑠璃町)

文字部分は版木押しで「奉納大乗妙典/四國靈場四拾七番/本尊阿彌陀如来/南海豫州熊野山/八坂寺」。中央の宝印は五七桐と十六八重菊の御紋。右上の印は「四国四十七番」、左下は「熊野山 妙見院」。

小村大師庵/西林寺

札始大師堂・西林寺の納経

【右】番外 小村大師庵
大師庵(札始大師堂)
本尊:弘法大師
所在地:伊予国浮穴郡小村(愛媛県松山市小村町)

文字部分は版木押しで「八墓右衛門三郎札始所/本尊弘法大師/南海豫州松山大師菴」。中央の宝印は蓮華座上の宝珠に弥勒菩薩の種字「ユ」(弘法大師を表す)。右上の印は「御自作」で、本尊の弘法大師像が大師御自作の像と伝えられることによる。左下は「橋杝山印」で、かつては小村大師堂に山号があったのか、それとも現在札始大師堂を管理している大蓮寺とは別に当時納経を司っていた寺があって、その寺の山号を印にしたものか、現時点では判断できない(大蓮寺の山号は青岸山)。

【左】48番 西林寺
清滝山 安養院 西林寺
本尊:十一面観世音菩薩
所在地:伊予国久米郡高井村(愛媛県松山市高井町)

文字部分は版木押しで「奉納經四十八番/本尊十一面觀音大士/清滝山 西林寺」。中央の宝印は蓮華座上の宝珠に十一面観音の種字「キリーク」。右上の印は「四十八番」、左下は「納經所」。

浄土寺/繁多寺

浄土寺・繁多寺の納経

【右】49番 浄土寺
西林山 三蔵院 浄土寺
本尊:釈迦如来
所在地:伊予国久米郡鷹子村(愛媛県松山市鷹子町)

文字部分は版木押しで「奉納経/本尊釋迦如來/豫州西林山/淨土寺」。中央の宝印は蓮華座上に釈迦如来の種字「バク」、文殊菩薩の種字「マン」、普賢菩薩の種字「アン」。右上の印は「第四十九番」、左下は「三蔵密院」。

【左】50番 繁多寺
東山 瑠璃光院 繁多寺
本尊:薬師如来
所在地:伊予国温泉郡畑寺村(愛媛県松山市畑寺町)

文字部分は版木押しで「奉納經/本尊醫(医)王殿/伊豫國/繁多寺」。中央の宝印は火炎宝珠に薬師如来の種字「ベイ」。右上の印は「五拾番」、左下は「四宗兼學」。

石手寺/太山寺

石手寺・太山寺の納経

【右】51番 石手寺
熊野山 虚空蔵院 石手寺
本尊:薬師如来
所在地:伊予国温泉郡石手村(愛媛県松山市石手二丁目)

墨書は「奉納/石手寺伽藍/行者丈」、日付は「子十一月十八日」。中央の宝印は十六菊の御紋。右上の印は「五十一番」、左下は「熊野山」。

【左】52番 太山寺
瀧雲山 護持院 太山寺
本尊:十一面観世音菩薩
所在地:伊予国和気郡太山寺村(愛媛県松山市太山寺町)

文字部分は版木押しで「奉納/聖武帝 御願所/本尊十一面観音大士/瀧雲山/太山寺」。中央の宝印は十六八重菊の御紋。右上の印は「四國第五十二番」だが、一度上下逆に押してしまったため、隣に押し直している。左下の印は判読できない。

円明寺/円明寺

円明寺・延命寺の納経

【右】53番 円明寺
須賀山 正智院 円明寺
本尊:阿弥陀如来
所在地:伊予国和気郡和気浜村(愛媛県松山市和気町)

文字部分は版木押しで「奉納/本尊阿彌陀如來/豫州須賀山/圓明密寺」。中央の宝印は十六八重菊と五七桐の御紋。右上の印は「四國五十三番」、左下は「金院」のように見える。

【左】54番 円明寺
近見山 宝鐘院 円明寺(近見山 宝鐘院 延命寺
本尊:不動明王
所在地:伊予国野間郡浜村(愛媛県今治市阿方)

墨書は「奉納経/本尊不動明王/近見山/圓明寺」、日付は「子十一月廿一日」。中央の宝印は五七桐と十六菊の御紋。右上の印は「五十四番」、左下は「寶鐘院」。
※延命寺の本来の寺号は円明寺であったが、53番の円明寺と間違われることが多かったため、明治になって江戸時代以来の通称である延命寺を正式名称とした。また、江戸時代の資料では当時の院号を「不動院」とするものが多いが、納経帳の印は「寶鐘院」が多いようだ。

別宮・南光坊/泰山寺

南光坊・泰山寺の納経

【右】55番 別宮南光坊
別宮大山祇神社
祭神:大山積大神
大積山 金剛院 光明寺 南光坊(別宮山 金剛院 南光坊
本尊:大通智勝如来
所在地:伊予国越智郡別宮村(愛媛県今治市別宮)

文字部分は版木押しで「奉納經/日本總鎮守/大山祇廣前/別當(当)大積山/南光坊」。中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に金剛界大日如来もしくは大通智勝佛の種字「バン」。現在、南光坊の本尊は大山積大神の本地仏・大通智勝如来とされているが、明治頃までは金剛界大日如来と認識されていたようなので、大日如来の種字の可能性が高いと思われる。右上の印は「五十五番」、右下の印は「南光之印」。

【左】56番 泰山寺
金輪山 勅王院 泰山寺
本尊:地蔵菩薩
所在地:伊予国越智郡小泉村(愛媛県今治市小泉)

墨書は「奉納/本尊地藏大士/金輪山/太山寺」。江戸時代の納経帳を見ると、版木押しのものでも「泰山寺」と「太山寺」の両方が見られるので、当時は「太山寺」が使われることもあったのだろう。日付は「子十一月廿一日」。中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に地蔵菩薩の種字「カ」。右上の印は「五十六番」、左下は「金輪」。

石清水八幡宮・栄福寺/仙遊寺

栄福寺・仙遊寺の納経

【右】57番 石清水八幡宮栄福寺
石清水八幡宮(石清水八幡神社
祭神:品陀和気命・足仲彦命・息長帯比売命
府頭山 無量寿院 栄福寺
本尊:阿弥陀如来
所在地:伊予国越智郡八幡村(愛媛県今治市玉川町八幡)

文字部分は版木押しで、額を模した枠の中に「伊豫一國一社 八幡宮廣前 別當(当)栄福寺」。中央上の宝印は中央に「石清水社」、両脇は梵字で、右が「キリーク」「ア」、左が「バン」「ウーン」ではないかと思われる。右上の印は「第五拾七番」、左下は「栄福之印」。

【左】58番 仙遊寺
作礼山 千光院 仙遊寺
本尊:千手観世音菩薩
所在地:伊予国越智郡別所村(愛媛県今治市玉川町別所)

墨書は「奉納/本尊千手觀世音菩薩/いよ 仙遊寺」。中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に千手観音の種字「キリーク」。右上の印は「五拾八番」、左下は「作禮山」。

伊豫国分寺/微笑庵

伊予国分寺・臼井御来迎の納経

【右】59番 伊豫国分寺
金光山 最勝院 国分寺
本尊:薬師如来
所在地:伊予国越智郡国分村(愛媛県今治市国分)

文字部分は版木押しで「奉納大乗妙典/本尊藥師如來/豫州國分密寺」。中央に宝印はない。右上の印は「四國第五拾九番」、右下は「伊豫國分密寺」。

【左】番外 微笑院(臼井水)
臼井山 微笑院(臼井御来迎)
本尊:弘法大師
所在地:伊予国桑村郡楠村(愛媛県西条市楠)

文字部分は版木押しで「奉納経/臼井水 弘法大師/豫州桑村郡楠邑(村)/臼井山/微笑院」。中央上の宝印は火炎宝珠に弘法大師を表す弥勒菩薩の種字「ユ」。その周囲にも梵字が記されているが、判読できない。左下の印も判読できない。

生木地蔵/横峰寺

生木地蔵・横峰寺の納経

【右】番外 生木地蔵 正善寺
生木山 正善寺(生木地蔵)
本尊:生木地蔵菩薩
所在地:伊予国周敷郡今井村(愛媛県西条市丹原町今井)

文字部分は版木押しで「弘法大師御作/生木地藏大士/豫州 正善寺」。中央の宝印は「佛法僧寶」の三宝印。右上の印は判読できないが、他の江戸時代の納経帳から「高祖大師真作」ではないかと思われる。左下の印は「證」。

【左】60番 横峰寺
仏光山 福智院 横峰寺(石鈇山 福智院 横峰寺
本尊:蔵王権現(現在は大日如来)
所在地:伊予国周敷郡千足山村(愛媛県西条市小松町石鎚)

文字部分は版木押しで「霊刹伊豫國/石鈇社蔵王權現/別當(当)横峯寺」。中央に宝印はない。右上の印は白抜きで「六十番」、左下は白抜きで「石峰云(雲)山」だと思われる。

香園寺/一宮大明神・宝寿寺

香園寺・宝寿寺の納経

【右】61番 香園寺
栴檀山 教王院 香園寺
本尊:大日如来
所在地:伊予国周敷郡南川村(愛媛県西条市小松町南川)

文字部分は版木押しで「四國第六十一靈刹/本尊大日如來/伊豫栴檀山香園寺」。中央に宝印はない。右上の印は「六十一番」、左下は「香園寺印」。

【左】62番 一宮大明神宝寿寺
一宮大明神(一之宮神社)
祭神:大国主之大神・大山積之大神・事代主之大神
天養山 観音院 宝寿寺(※令和元年現在、納経は香園寺境内の礼拝所でも行われている)
本尊:十一面観世音菩薩
所在地:伊予国周敷郡新屋敷村(愛媛県西条市小松町新屋敷)

文字部分は版木押しで「六十二番靈刹/伊豫國一宮大明神/別當(当)寶壽寺」。中央に宝印はない。右上にも印はなく、左下の印は「寶壽精舎」。

吉祥寺/前神寺

吉祥寺・前神寺の納経

【右】63番 吉祥寺
密教山 胎蔵院 吉祥寺
本尊:毘沙門天
所在地:伊予国新居郡氷見村(愛媛県西条市氷見)

墨書は「奉納經/六十三番/本尊多聞天王/与州密教山/吉祥密寺」、日付は「天保十一子年霜月廿三日」。中央の宝印は十六八重菊の御紋。右上に印はなく、左下の印は「密教 胎蔵」。

【左】64番 前神寺
石鈇山大権現(石鎚神社
祭神:石鈇山大悲蔵王権現(現在は石土毘古神)
所在地:伊予国新居郡西田分(愛媛県西条市西田)
石鈇山 金色院 前神寺
本尊:石鈇山大悲蔵王権現(現在は阿弥陀如来)
所在地:伊予国新居郡西田分(現在は愛媛県西条市洲之内に移転)

文字部分は版木押しで「四國靈場六十四番/石鈇山大悲藏王權現/別當(当)前神密寺」。朱印はなく、左下に「南海層峯」と思われる黒印が押されている。

三角寺/仙龍寺

三角寺・仙龍寺の納経

【右】65番 三角寺
由霊山 慈尊院 三角寺
本尊:十一面観世音菩薩
所在地:伊予国宇摩郡三角寺村(愛媛県四国中央市金田町三角寺)

墨書は「奉納經/本尊十一面観音/伊与/三角寺」、日付は「子十一月廿五日」。中央の宝印は蓮華座上の火炎宝珠に十一面観音の種字「キャ」、不動明王の種字「カーン」、毘沙門天の種字「ベイ」と思われる。右上の印は「四国六十五番」、左下は「慈尊院印」。

【左】65番奥之院 仙龍寺
金光山 遍照院 仙龍寺
本尊:弘法大師
所在地:伊予国宇摩郡馬立村(愛媛県四国中央市新宮町馬立)

墨書は「奉納經/本尊弘法大師/御自作之尊像也/いよ/仙龍寺」、日付は「十一月廿五日」。中央の宝印は弘法大師を表す弥勒菩薩の種字「ユ」。右上に印はない。左下の印は「金光山 仙龍寺」。

天保11年(1840)10月から11月(新暦の11月から12月)にかけて四国八十八ヶ所を巡拝した納経帳。京都の御室御所(仁和寺)と東寺を...

天保11年(1840)四国八十八ヶ所の納経帳(1)京都・讃岐国前半
天保11年(1840)四国八十八ヶ所の納経帳(2)阿波国
天保11年(1840)四国八十八ヶ所の納経帳(3)土佐国
■天保11年(1840)四国八十八ヶ所の納経帳(4)伊予国
天保11年(1840)四国八十八ヶ所の納経帳(5)讃岐国後半


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